カオスの国の住民たち。バスと子どもとおじーと私。
仕事が終ったおじー迎えにいって、おじーと一緒にバスに乗った時のこと。
おじーの仕事が終る時間(要は、学校が終る時間。おじー、教師なので。)は、イコール、子どもも学校が終る時間だ。
我々が乗った時には空いていたバスが、2駅後には超満員!スクールバス状態になってしまった。
空いている席に我先に!と飛び込んでくる子どもたち。私の隣の席には小学2、3年生らしき女の子が座った。
おじーと、「わー、スクークバスじゃーん!!これ(^^;)」とちょっと苦笑い。
車内は一気に騒がしくなった。
次の駅で、白人の老人が乗り込んできた。
私が席を譲ろうと腰を上げた時、おじーが手で私を制した。少し様子を見て、周りが誰も譲ろうとしない状況をみて、
「君の前にいる、年配の男性に席を譲ってあげてくれないか?」と私の隣の女の子に呼びかけた。穏やかだけど優しい口調では言っていない。
しぶしぶと言った感じで席を譲る女の子。
「ありがとう。」と女の子に向かってお礼を言うおじー。
老人が私の横に座り、「ありがとう。」と我々にお礼を言った。気の良さそうな、そして気の弱そうな老人だった。「このバス、スクールバスみたいだね〜〜。」と、お互いに苦笑いをした。
しばらくして、大分、車内混雑が緩和されてきた。
私達の席の目の前には5、6年生位の男の子が座っていて、その男の子の隣には1年生くらいの女の子が腰掛け、その女の子のおばあちゃんと思われる女性がつり革に捕まって立っていた。
おじーが、その男の子に向かって、
「ヘイ。目の前に高齢者がいるんだよ?席を譲ってあげたらどうだい?」
と呼びかけた。先ほどと同じ、穏やかだけど優しい口調では言っていない。
男の子が黙って立ち上がり、我々の前の空いていたスペースに立っていた。
こういう時、この男の子の立場だと、なんというかもどかしいものがあるんだろーなー。。心の中で、「このくそじじい。」とか悪態ついたりしてるのかなぁ・・なんて、そんなことがちょっと頭をかすった。
我々がバスを降りる時、おじーがこの男の子に向かって、
「紳士的な態度を取ってくれて本当にありがとう。」とお礼を言った。
私も「あなたのした事はとても良い事だったよ。ありがとう。」と言った。
照れながら、笑顔を返してくれた男の子。
ああ、いい子だな〜〜〜と思った。
随分前のことだけど、小さな子ども達が遊ぶプレイグラウンドの傍を通った時に、石を投げられた事があった。
おじーも私もビックリして振り返ると、まだまだ歩くのもおぼつかない3、4歳位の女の子だった。
ひどいな・・・と思ったけれど、小さな子どもがした事だからと、私はそのまま無視しようとしたのだけど、
おじーが、「親に話にいく。」と言ってその女の子を目で追った。
既にその子の母親が気付いて子どもの注意をしている。
まあ、注意をしているんだったらいいか・・・と、2人で歩き始めた。
通りを少し行ったところで、後ろから、
「ソーリー。(ごめーん)」と、声が聞こえてきた。
振り向くと、さっきの女の子が母親と一緒にこっちを見ている。
母親につつかれてもう一度、「ソーリー。」と叫んでいるけど、そこに反省の色は全くない。
母親が半ばあきらめ顔でその子ども抱っこして、我々の方に歩いてきた。
「本当に、この子ったら・・・」とこぼしている。
母親にしがみついてこっちを振り向こうともしない女の子。
おじーが、
「謝ってくれてありがとう。」とその女の子に言った。
相変わらず、こっちを見ない女の子。
あきれている母親が、その子を抱きかかえて去って行った。
おじーが一言、
「あーあ、甘やかされちゃってさ・・・。ひどいもんだよねー。」とこぼした。
私たちは、女の子からの全く反省の色のない口先だけの「ごめーん。」は聞いたけれど、母親からは何も聞いていない。
私の感覚だと、自分の子どものした事に対して、こういう場では親も謝罪するだろうな・・と思っちゃうんですけど、他人だからなのか、アメリカだからなのか、人に依るのか、ここに母親からのSorry(ごめんなさい)の言葉はなかった。
さて、教師というのは、相手にするのが生徒だけではない。生徒の親、同僚、学校・・・と、色々なコミュニケーションがある。
おじーの教師歴の中にも数々の出来事がある。
もう忘れたものも多いみたいだけど、「そういえばこんなことあったなー」と私に話てくれた。
授業を妨害する、明らかに態度の悪い生徒をしかると、生徒の方がこんな事を言ったらしい。
「うちの父親に言いつけて仕返ししてやるからな。覚えてろよ。」
これが3、4年生の小学生が言う言葉である。
後日、身体にタトゥーをちりばめた、如何にも体格がよい男性がおじーの前に現れた。
「自分の子どもが、あなたからひどい扱いを受けていると言っているんだが?」と、冷めた表情でおじーを脅してくる。
おじーも警戒しながら、自分が授業でどんなことをやっているか、授業を妨害する子どもにどのように接しているか、それでも全く言う事を聞かない子ども達がいるという現状を冷静に話し、
「実際に私のクラスを見て下さい。そして、それでもあなたにとっておかしいと思う事があれば言って下さい。」と言った。
ここまで説得するのにも、大分時間を要したらしい。
そして、実際に授業をみたその男性、自分の子どもが暴れ回っている姿を見て唖然。
自分の子どもに拳骨を食らわし、暴れる子どもを引きずって帰っていったらしい。
その後、その子どもは大人しくなったそうです。
ちなみに、この男性、コートを羽織ってたということなんですけど、
おじー曰く、
「ま、大体、この手の状況でコートを着てる人は銃持ってるよね。本当に警戒しないと危ないからね〜〜。」
・・・・・・・・
「子どもの悪態だけじゃなくて、両親の方だって、ドラックやってたり、ギャングだったり、そんなのいっぱいいるからね〜〜〜。」
(^^;)うーん、さすがアメリカ。
今、おじーが生きてること、奇跡みたいなものかもね。。。
ちなみに、じゃあ、学校側はどうなのかというと・・・
これも学校によるみたいですけど、
こんなことがあったらしい。
授業妨害が激しい子どもがいた。
あまりにもひどいので授業にならず、おじーはその子を特別室(なにやらカウンセラーやら、場合によっては校長先生と話すお部屋があるらしい。)に送った。
数十分後、その問題児がクラスに戻ってきた。大人しくなったのかと思いきや、また暴れだした。その子の担任もその場にいたのだら、すっかりなめられてしまって担任の言う事をきかない。
そんなやり取りが数日続いた。
おじーが学校側にこの子に対処してほしいと頼んだ。必要であれば、自分も参加するから親を呼んで話し合うのでも良いと言った。
ちなみにおじーは、その問題児に対して週1で教えるだけの音楽教師だ。担任でも何でもない。
学校からの回答は、
「あなたは子どもに対してもっと我慢する必要がある。」というものだった。
おじーがあきれてしまい、何度か学校に掛け合ったけれど駄目だった。
当の担任はどうかというと、まだまだ若い先生で子どもの扱い方を知らない。
「彼女も彼女なりに必死なんだけどね。。。。」と、おじーもため息をつく。
冒頭のバスでの出来事に話を戻す。
私は子どもではないとは言え、お年寄りを目の前に黙って席に座っていられる程に年を取っていない。(なんか分かり辛い表現ですけど。)
私が席を譲ることで、子ども達にも見本になるのでは??と思ったんですけど、
「そんなことしても子どもは分からないよ。人の振りをみて学ぶには、彼らは若すぎる。分かる子はもうとっくに席を譲ってるんだよ。」
ま、そうだよな。。。
「本当はバスの運転手がアナウンスするのが良いのかもしれない。そういう運転手もいたけど、バスの運転手の方が乗客から暴行を受けた例もある。乗客同士で暴行になることもある。この手のことは、場を見てやんなきゃいけないことだけど、とにかく、もう年齢問わずマナーがひどすぎるよ。。。」
おじー、基本的には車通勤なんですけどね。。
ちなみに、この日、おじーを迎えにいくのに1人でバスに乗っていたら、私の向かい側に、筋肉モリモリのいかついアフリカン・アメリカンの男性が座った。
おじーの2倍はありそうなごっつい体格の人だった。
で、この彼が、突然、おっーーーーーーきな声で、わめき散らし始めた。
「げげ???大丈夫かな??(^^;)」
目が合わない様に窓をみる私。
みんなびっくりして振り返っている。
緊張感が走る車内・・・
いや、ほんと怖いからさー(><)途中でもう降りちゃおうかな・・・と思ったら、
その男性が下車した。。。
ほっ・・・・良かった〜〜〜(><)
この話をおじーにしたら、
「ああ、あの人ね。怖いよね〜〜。」と言っている。
え??知ってるの?だって、おじー普段は車通勤じゃーん。
「だって、あの人、もう何年も前からいる人だよ。大きな声でみんなを震え上がらせてるんだよねー。くくく(笑)」
えー?そんな有名(かどうかは知らない。)人なわけ??でも、怖いんですけど。(><)
「一度、バスが一緒になっちゃってさ、うっかり目が合っちゃったんだよね。そしたら、こいつ(おじーのこと。)は、オレよりマッチョだぞ。気をつけろ。気をつけろ。。って大声で独り言言った後、ピタっと大人しくなっちゃったんだよ。」と言って、
腹を抱えて思い出し笑いをしているおじー。
あーあ、どうなっちゃってんの、サンフランシスコ・・・(^^;)
良いも悪いも、もうわからんわ。
ただ、おじーのまっすぐに伸びた背中を見ながら、私はおじーの在り方に憧れ、そして、おじーの爆笑する姿をみて、私にはまだ見知らぬカオスな世界を覗き見ている。
おじーの話を聞いているだけで、毎日新鮮だ。。。(^^;)
どんな写真を取っても、だいたい絵になるおじー。
だいたいまぬけな写真になってしまう私とは大違い。