乗り合いタクシー(Uber,Lift)物語その2 あなたに会えて光栄だった。
Lift(乗り合いタクシー)の運転手が道を間違えた。
ちなみに乗り合いタクシーって何?っていうひとは、こちらをどーぞー。
サンフランシスコ近辺を流しているドライバーにとっては、ちょっとあり得ない痛恨のミスだった。
Freeway(高速道路)に入り、方向が3つに分かれる分岐点のところで、我々が希望するダウンタウン方面とは全く逆方向の道に入ってしまう車。
私は車の免許を持っていないけど、それでも、こっちの高速道路の標識は分かりやすいな〜と思う。
ましてや、客を乗せるタクシーのドライバーなら、こんなミスは絶対にないはずなんですけど、
このドライバー、やってしまいました。。(^^;)
中年の、ラテン系なのかアジア系なのか・・・ちょっと小太りのおじさん。
「やってしまった〜〜〜(><)」と小さく叫んでいるのが聞こえ、
「えーと、えーと・・・汗」と苦笑いしながら運転している。
後部座席でおじーと顔を見合わせ、
「大丈夫か?このドライバー・・・」と、目で会話する我々。
Googleマップ(携帯で見れる地図のこと。念のため。)を頼りに運転しているドライバーより、サンフランシスコ歴・約50年のおじーの方が、どう考えたって道を知っている。
おじーが、
「◯◯の出口で降りて、◯◯ストリートにもどるんですよね?えーと、大丈夫ですか?(苦笑)」とアドバイスも兼ねて話しかける。
「はい〜〜〜。大丈夫です〜〜〜。」と、腰低めな感じで答えるドライバー。
腰低めな態度とは裏腹に、無理矢理割り込んでクラクションを鳴らされたり、スピードを出して他の車にぶつかりそうになったりと。。
やっぱり大丈夫なんだろうか。。。(^^;)
不安がよぎるおじーと私。
助手席には、我々より前に乗車していたアフリカン・アメリカンの女の子が、ドライバーのミスや、おっとっとな運転にもお構いなしに、
「私の彼が浮気して、他の女の子と子ども作っちゃったのよ〜〜。き〜〜〜〜!!」と、ただならぬ様子で電話に夢中。。会話丸聞こえ。
どうなってんのこの車。。。(^^;)
ほどなくして、浮気されたかわいそうな女の子はぷりぷりしながら車を降り、おじーと私が車内に取り残された。
きわどい運転を続行しているドライバー。
ひやっとする私たち・・・
だ、大丈夫かな。。。(^^;)
そこでおじーがこんなことを言った。
「Lift(乗り合いタクシー)の仕事はどう?この仕事より良い仕事なんてないよね?」
これ、おじーは冗談を言ったんですけど、それに対してドライバー、
爆笑!!!!!
とってもうけちゃったみたい!!!(^^)
安心したのか、そこからこのドライバーが話だした。
自分はミャンマーから来たこと。
(ちなみに私も最近、ミャンマーから来たという中年の女性に会った。彼女は難民としてアメリカに来たのだけど、戦争で両親を亡くしている。恐らく彼も難民だろうなと思う。)
しばらくサンフランシスコでリムジンのドライバーとして働いていたけれど、疲れてしまって、サンフランシスコを出た郊外でタイ料理レストランを経営した。(あれ?ミャンマーじゃなくて、タイなんですね?と心の中で突っ込む私とおじー。)
コックも、接客も、全て自分でやったそうだ。
一生懸命働いて、子ども達も立派に仕事につき(電力会社勤務と歯科医師だって〜。良かったね。^^)、レストランは畳んで、今はナパ(ワインで有名なところ。サンフランシスコから車で1時間ちょっとかな。通り過ぎたことしかないけど。。)に住んでいるとのこと。運転の仕事や週3日だそうな。年齢は60代。
なるほどね〜、ナパに住んでるんだったら、道、間違えちゃうかもね〜〜。でも、まあ、あんまりないと思うけどね・・ハッハッハ(^^;)
そのあと、おじーとこのドライバーのおじちゃんが、サンフランシスコが如何に変わっていったかを話していた。
人にもよるけど、特にカラーと言われる人たち(白人以外のことです。)で、少し年配の人達は、サンフランシスコの変化を良く思っていない人が多い。年配じゃなくても、サンフランシスコ(またはベイエリア)に疲れた・・・という話は良く聞く。
どんどんサンフランシスコに人が移ってくるようになって、家賃高騰、物価高騰、運転マナーの悪化・・・・など色々あるらしい。
「本当に、運転マナーが悪い人が増えましたよね〜〜。だから、私もつられて時々、若者みたいな運転になっちゃうんですよ〜〜。」と、ドライバーのおじちゃん。
・・・・(^^;)
ま、そうですよね。だから、この運転なんですよね・・・(^^;)
顔を見合わす、おじーと私。
私たちとのおしゃべりが始まってからは、運転は安定してたけどさ。よかった〜(^^;)
ほどなくして、我々の目的地に着いた。
もうすっかり和気あいあいとした雰囲気になり、なんだか名残惜しい気持ちにさえなった。
冷やっとさせられ、「この運転手、大丈夫???」と疑ったけど、どんでん返しの様に、楽しいおしゃべりのひと時を過ごした。
車を降りる時、ドライバーのおっちゃんが、
「あなた達を車に乗せることができて光栄だった。あなたに会えて良かった。」と言った。
(こういう場合、大体、good to see youとかnice to see youという言葉を聞くんですけど、honorって言ってたのが印象的だった。よく使われる言葉なのかもしれないけれど、私はあまり聞かない。)
私達も、
「あなたに会えて光栄でした。」
と返した。
おじーと私、運転手と会話をするのはしょっちゅうなんですけど、明らかに今回は何かが違った。それを何と説明していいのか分からないけれど、私とおじーはこの現象を、
「彼(ドライバー)は、本当に素敵なエネルギーを持った人だったね。」って言っている。
おじーも私も、幸福感に包まれていた。
何故だか分からない。
きっとドライバーのおじちゃんもそう感じたのかもしれない。
これは私の見方でしかないけれど・・・・
おじーといると、時々、こういうことが起きる。
見知らぬ人と、ほんの少しの会話ではっとするような幸福感に包まれること。
おじーと私(アフリカン・アメリカンと日本人。年齢もかなり違う。)かなり珍しいカップル、要はマイノリティー(少数派)なんですけど、ここ、アメリカ・サンフランシスコで、同じ様にマイノリティーの人に会う時、こんな幸福感に包まれることがある。それは人種のマイノリティーというより、その人の個性や生き方で、自分は世間から見れば少し変わっていると思われるかもしれないけど、それでも、自分の道を行こう・・と決めたようなそんな人達。
「あなたに会えて、本当に本当に良かった。」
何か自分自身であることにほっとするような、安心できる様な、場合によっては、ちょっとうるっと涙がでそうな、そんな時間。
日常にある、小さな、小さな出来事だけど、
でも、忘れたくない不思議な時間だったので、記録しておきます。
てか、そろそろ車買わんとな〜〜〜〜。
交通費がかさむ〜〜〜〜〜(><)
きれいな夕焼け。私の日々の感動はこんな感じで溢れている。